つめたい星の色は、青

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 やたらと広いパチンコ屋の駐車場の隅に車を停め、日野は脆い薄氷に触れるような慎重さで水本の頭を撫でる。いつもしていることなのに、何故だか緊張してしまう。黒い大きな瞳からこぼれる涙も、濡れた睫毛も、下唇を噛み締める仕草も、頬を照らす柔らかな蜂蜜色の光も。全てが映画のワンシーンのように美しく、この目の前で起こっていることは嘘のように思えた。  恐る恐る腕を伸ばして水本を抱き寄せると、息が苦しくなるくらい強く日野にしがみついてくる。体温も首元にかかる息もいつもよりずっと熱く感じる。触れ合う肌は柔らかで心地好く、あと何日かで東京に行ってしまうなんて考えられない。これから先のことなど全然想像出来ない。水本が隣にいない日々をどうやって受け入れれば良いのか。もうこれ以上何も考えたくないから、時間が止まってしまえばいい。子供じみた願いだと思いながら、日野はそう願わずにはいられなかった。  もう大丈夫だから、と水本は日野を掴む手をほどく。水本のことを信じているのに、彼が言う「大丈夫」だけはいつまで経っても信じられないのが寂しい。帰ろう、と水本が言うのでエンジンをかけようとするのだが、何だか手が上手く動かない。言わなきゃ。今言わなかったら、きっと一生後悔する。日野は息を強く吸って、その思いと共に吐いた。 「……大丈夫じゃないがね。水本、全然大丈夫じゃないがね。いつもそうやって一人で全部我慢して大丈夫って言うけど、そうじゃない……」  大事なことなのに、舌がもつれて上手く言えない。日野の顔を見て水本は、泣き腫らした顔を緩めて少し笑う。     
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