つめたい星の色は、青

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つめたい星の色は、青

 手を伸ばせばいつでも触れられる程度の距離だが、本当に触れてしまえば、彼が纏っている静けさを乱してしまうことになるのだろう。  そう思いながら、日野博久は隣の席で居眠りをしている水本慧の顔を横目で少し見る。その目を真っ直ぐに見るのはまだ怖いから、いつも寝顔ばかりを盗むように見ていた。  高校二年のクラス替えで隣の席に、同じクラスになる前にも、日野は水本のことを見つけていた。しかしこんな風に、毎日窓際の席でヘッドフォンをして居眠りする姿を眺めていられるとは思ってもみなかった。  いつも薄暗い空と、山と田んぼの蒸せ返るような緑に囲まれたこの田舎町には、不釣り合いなほどに美しく。ただただ真っ白で光に溶けるような肌も、ナイフで深く切り込みを入れたような二重まぶたも、ふさりとした睫毛の束も。全てが作り物のようだ。腕の良い職人が作った、あまりにも素晴らしい出来なので誰にも売らずに棚の上の方にひっそりと飾られている、そういう人形のよう。どんな風に出来ているのか細部まで触って確かめたい。  誰も踏み入ったことがないまっさらな雪原に足跡をつけて汚したい。彼に触れたいという思いはそんな欲望にも似ていて、穏やかに降る雪のように日に日に積もっていく感情を、まだ持て余している。
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