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駅前の、とあるビルの前で俺は人を待っていた。友人はいつも待ち合わせの時間に来ることはない。大概、10分から30分は平気で遅れてくる。
今日も同じだ。既に10分が経過しているから、もう少しで来るとは思うのだが……。
腕時計を見ながら待つ間、晴天の空から容赦なく日光が降り注ぐ。暑さで汗が額を濡らしている。まだ行動もしていないというのに、ここに立っているだけで運動をしたかのような汗の滴り様だ。
ハンカチで汗を拭おうと、ポケットに手を突っ込んだ時、自分の隣に人がいることに気が付いた。白い帽子を被った女性だ。ベビーカーを押しているところを見るに、赤ん坊がいるのだろう。
だが、赤ん坊はベビーカーの中にいなかった。女性は赤ん坊をおんぶしていて、その子をあやしている。ベビーカーに乗せればいいものを、なぜわざわざ乗せないんだ?
俺の視線に気づいたのだろう、女性と目が合ってしまった。女性は少しはにかむと、軽く会釈した。
「ごめんなさい、うるさかったですか?」
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