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「あ、いや、元気なお子さんですね。でも暑いのに、ベビーカーに乗せないのかと、その、少し不思議に思ってしまって」 「ああ、それがベビーカーに乗ってるのを嫌がって、おんぶがいいって駄々をこねちゃって。それで、仕方なく……」 「そうなんですか? 嫌がる?」 「ええ、子供によって違うようですけど、この子は私の姿が見えないのが嫌らしくて、ベビーカーが好きではないんです。乗せているとぐずってしまうんですよ」  そういうものなのか。子供はいないから、そういうのはわからなかった。赤ん坊は自分の指をしゃぶりながら、俺のほうを眺めている。やっぱり小さいな。俺もいつか赤ん坊を抱くときが来るのだろうなあ。  女性と世間話をしていると、やがて離れたところから友人が声をかけてきた。 「お友達ですか? すっかり長話をしてしまって、すみません。では私はこれで」 「ああ、こちらこそすみません、それじゃあ」  女性と別れると同時に、友人が近寄ってくる。
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