第1章

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 というと、いつものように、僕の右下に廻ってくる。四段の引き出しがあるところだ。そして僕を見上げて両足を揃える。  僕は、ミウを見ながら、机を軽くたたいて、 「ここへ、おいで。」と言う。  来たいくせに、この声がないと来ない。呼ばれたから来てやっている。そういう姿勢を崩さない。  ふわっと机に飛び乗った。  撫でてやる。念入りに左手で撫でながら、引き出しから例のカードを取り出した。その気配に、引き出しとは反対方向に体を向けて立っている彼女の耳が動く。  撫でられることに満足すると、ミウはパソコンの前、画面とキーボードの間に体を横たえる。  それを見計らって、カードをさりげなくミウの前に置いた。と、カードに反応して、上体を起こした。カードを見ている。猫は警戒心が強い。しかし、飛び去るまでには至らなかった。猫は好奇心も旺盛なのだ。鼻を近づけてにおいをかぐ。  僕は集中する。 「ええか、ミウ、よー聞いてくれよ。」  ミウを見つめながら、ゆっくりと言う。 「僕は、お前のことが好きや。お前のことをもっとよく知りたいと思ってる。しやから、これを作った。見てくれ!黒の丸と黄色の丸、丸が二つあるやろ。これで、お前と遊ぶんや。」  ミウが前足を舐め始めた。前足を口のところに持ってきて、溶けかけのアイスクリームを舐めるように強く、早く舐める。  ストレスを感じているのだ。  問題は、それが、どんなストレスかだ。僕の言っていることが全く分からないで、目の前に、不可解なものがあることに対するストレスなのか。それとも、僕の言うことをある程度理解して、未知の話題に対する警戒心からのストレスなのか。  僕は続ける。 「まず、僕が今から言うことが、合ってれば、ここを押さえる。」  自分の手をグーにして、黄色の丸の上にぐりぐりと押しつける。 「こーやで。合ってれば黄色の丸に、こうして前足を乗せるんや。分かるか。」  舐める動きが止まった。と同時に、彼女からすれば突然自分に向かって突きだされる形になった僕のグーを軽く二回、猫パンチした。爪は出さない。 「次に、違う、合ってないと思ったら、ここ、黒丸を押さえる。こうや。ええか。」  同じようにグーを作って、今度は黒い丸に押しつける。
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