いわく

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いわく

友人のマミさんが、K市の企業で勤務していた時に体験した話。 8階建てのビルの、最上階ワンフロアが、マミさんの職場だった。 入社して、半年ほど経ったころ、一人残業をしていると、天井から、"ドスッ "と重たい音が聞こえた。 地震かと身構えたが、なにも起こらない。 不思議に思いながらも、目の前の書類の山を片付けるため、マミさんは再び机に向かった。 翌日、前日作成した資料に不備があり、残業をしていると、また… "ドスッ " 重たい音がフロアに響いた。 時計を見ると、21時をまわったところであった。 数日後、上司と昼食を摂っている時に、会話が途切れたので、なんとなく残業中に聞いた「音」の話をしてみることにした。 「何日か前、ここに入って初めて遅くまで残業していたんですけど、変な音がして」 「あぁ、21時でしょ? いつもよ。その時間に死んでるから」 「え、でも、救急車のサイレンとか聞こえなかったですよ」 「いやいや、最近の事じゃなくて。もう2年くらい経つかな。隣のビルから、飛び降り自殺があってね、ココの屋上に落ちて死んでたのよ。それから、毎日21時になると、音がすんのよ! でも、大丈夫! 音だけだから。最初はね、騒ぎになったのよ。で、配管調べたり、お祓いしてもらったり。まぁ、害はないみたいだから、大丈夫!」 明るい口調で、捲したてるように言い切ると、上司は席を立ってしまった。 入社から二年目に、マミさんは転職のため、この会社を退職した。 やめるまでの間、残業する度に、この音は聞こえ続けていたという。
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