おたんじょうび

2/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
 今日は折角の誕生日なのに、夕方になった途端、雨が土砂降りになってしまった。気持ちが憂鬱になる。  でも、年に一回きりなのだ。今日は楽しまないと。  お母さんがごちそうを用意してくれて、お父さんはプレゼントをくれた。欲しかった人形だ。とても可愛い。  雨がごうごうと音を立てて降り注いでいる。風も強くなっているみたいだ。台風や嵐の予報はなかったはずなのに、急にすごい天気になった。  ごちそうを食べた後、家族でゆっくり団欒していると、家のチャイムが鳴った。  わたしもお母さんも、お父さんも顔を見合わせた。当たり前だ。こんな天気だというのに、一体誰が来たというの?  お母さんが玄関に向おうとしたら電話が鳴ったので、わたしがここぞとばかりに玄関へ向かう。そしてドアを開けると、思わずきゃあっと悲鳴を上げた。  草や泥が髪から顔から全身に付着し、水が滴る――クラスメイトのヒロシ君がいた。手足が変な方向に曲がっているのに、彼は笑っている。 「はっぴいばあすでい」  彼は歪に笑うと、振り返り、ねちょねちょと足音を立てて去っていった。ドアを閉めてから、わたしは呆然としていたものの、きっとわたしのお祝いに来てくれたのだろうと話をまとめる。  ただ、ヒロシ君が来てすぐ、電話を終えたお母さんが青ざめた顔で私へ伝えた。 「ヒロシ君、川に流されて行方不明になってるんですって」
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!