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「臭うなら離れれば?」
「別に茅紘が臭いって話じゃなくて、クラスメイトや先生が酷いって話」
そっちか、と思って少しだけホッとした私がいた。
晃は私を後ろから抱き締める形で座り、コーヒーを飲む。
「というか、どうしてこんな格好になってるの?」
「ん? 君が僕の家にきてくれたから」
「あなたが無理矢理、連れてきたんでしょ?」
「ヤダな~、お互い同意したじゃん」
「それは――」
学校帰りに、たまたま仕事帰りの彼と出逢った。
「やぁ、偶然だね」
と声をかけられて、お茶でもどう? と誘われた。さすがにゴミ箱を頭からかぶった日に、店屋に行く気にはなれなくて断ると、しつこく理由を訊かれた。
いつもなら素直に言ったりしないけど、今日は違う。コイツが訊いてきたからかもしれない。
「頭からゴミ箱をかぶせられて、臭い人とお店に入ったらあなたも白い目で見られてもいいの?」
「僕は気にしないけど、君が嫌なら仕方ない。僕の家でお茶しようか」
そんな流れで晃の家にきた。
(どう考えも、この状況おかしいでしょ)
私の手を握る彼の手は優しくて、女の力でも振り払えば逃げられたと思う。でも、それをしなかったのは、離れたくなかったからかもしれない。
(離れたくはない、って思ったけど……)
こんなに密着するとも考えてなかった。
「……臭くないの?」
「ん? そんなの気にならないけど……」
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