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彼はスンッ、と鼻を鳴らして、私の首元を嗅ぎ始める。
「ちょっと!?」
首元に手を当てて、勢いよく顔を上げた。
目の前に晃の笑顔が視界いっぱいになって、この間のキスを思い出す。
「臭いなんて気にならないけど? 茅紘の匂いしかしないよ」
「汗臭いって言いたいの?」
「そうじゃないけど……あれ、どうしたの? 顔赤いよ?」
(調子狂う……)
心臓が激しく脈を打って、呼吸が苦しくなる。
教室にいる時と同じように息がしづらいけど、嫌なものじゃない。
「そんなに気にするなら、シャワー使う?」
「え?」
「別に僕は気にしないよ」
(気にしないんだ……)
首を傾げて、どうする? と尋ねられる。
(何か、私だけが意識してるみたいじゃん……)
「あれ、もしかして変なこと考えた?」
「なっ!?」
「さっきより顔赤くなって、可愛いね」
また、からかわれた。それに対する怒りなのか、考えていたことを言い当てられた恥ずかしさなのか、身体が熱くなる。
「大丈夫、茅紘がうんって言わない限り手を出さないから」
「……言ったら出すの?」
「そりゃね、僕も男だし。それに、好きな子からの誘いを断る理由もないだろ?」
そう言って、彼は私の額に軽いキスを落とす。
「シャワーにする? お茶のおかわりにする? それとも帰る?」
「……おかわり」
「ん、わかった」
変な人だけど、不思議と心地良かった。
学校にも、家にもない居場所が、ここにはあると思ってしまう。
誰にも見向きをされない私のことを好きだと言ってくれるのが、嬉しかったのかもしれない。
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