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――そんな別れ方をしてから一週間が経った。
さすがに私も少しは頭が冷えて、一ピコメートルくらいは言い過ぎたかもなって反省した。でもあの時はどうしても我慢できなかったんだもん。
ちなみにやったことに関しては後悔していない。悪いのはミルちゃんなんだし。
ただ、その一方で気になっていることはある。おカネも生活能力も脳みそも甲斐性もワイドショーも皆無なミルちゃんが、私の助けもなしにこの一週間をどうやって過ごしたのかなってこと。きっと寂しくて苦しくて、自殺したくなるほど悔やんだんじゃないかな……。
とはいえ、正面から素直に戻るのは抵抗がある。そこで私はシェアハウスの正面に建つ三十階建てオフィスビルの一室から、様子をうかがうことにした。それなら気付かれずに部屋の中を観察することが出来る。
まずは持ってきたノートパソコンの電源をオン。そして部屋に設置してある隠しカメラの映像をディスプレイに映し出した。さらに盗聴器の音声受信装置のスイッチを入れて、耳を澄ませる。
「ん? 誰もいないのかな……」
部屋にホモサピエンスの姿はなかった。そこでうごめいていたのは、シェアハウスに同居しているゴキブリさん一家とクマネズミさん一家だけ。彼らは誰もいないのをいいことに、衝撃の行為をおこなっている。
「キャッ、クマネズミさんったらゴキブリさん一家を食べちゃってるぅっ♪」
食べちゃいたいほど相手が好きだって気持ち、私にもよく分かる。でもあの子たち、いつの間にそんな深い関係になってたんだろっ?
「――って、今はそんなことを考えている場合じゃなかった!」
気を取り直した私はイヤホンに耳を傾けた。でも聞こえてくるのは、クマネズミさんがゴキブリさんを咀嚼する音くらい。ほかには何も聞こえない。
このままでは何の手がかりも状況も把握できないと判断した私は、仕方なくシェアハウスへ戻ることにした。そしてちょうど洗面所で入れ歯を洗っていた同居人の波留さん(七十歳・♂)に声をかける。
波留さんは同じシェアハウスに住む最年長で、キレると怖いことで有名。その際に口から飛び出す入れ歯は、通称『バイオウエポン』と呼ばれ、同居する女子たちの間で恐れられている。
髪の毛や顔、体にそれが直撃し、トラウマになった子は数知れず。だから決して波留さんを刺激してはいけない。
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