プロローグ・2

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   もっとも、怒らせなければすごく面倒見のいい頼れる存在で、人脈も雑学知識も豊富なリーダー的おじいちゃんなのだ。 「波留さんっ!」 「おっ? フッコじゃねーべか? ヨーロッパへ魔王を倒しに行ったんじゃなかったのけ? だっておめぇ、勇者の末裔なんだろ?」 「はぁっ!? 何を言ってるんですか! とうとうボケちゃったんですか? 私が勇者の末裔のわけ、ないじゃないですかぁ」 「だってミルディスが言ってたべ。フッコは勇者の末裔で、魔王を倒すためにゲーテとシューベルトに聞き込みをしに、ドイツとオーストリアへ旅立ったって」 「なっ……!?」  私は頭が真っ白になってしまった。少しの間ボーッと立ちつくして途方に暮れる。だってミルちゃんがそんな嘘をつくなんて信じられなかったから。 「許せない……。私は魔法少女になるのが子どもの頃からの夢。勇者なんて選択肢はありえない。ミルちゃんはそれを知ってて、そんな嘘を波留さんに吹き込むなんて! それは汚れなき乙女の夢に、後ろ足で砂をかけるようなもの! これ以上の恥辱はないよっ!」 「またまたぁ、ホントは勇者の末裔なんだべ? みんなに知られたら困るから、否定してるんだべ? 大丈夫、誰にも言いふらさねぇべさ。ただ、すでに色々なSNSや某巨大掲示板に、モザイクなしの写真付きで『これが勇者の末裔だっ!』って説明加えて投稿したけんども」 「おバカぁああああああぁーっ!」  私は我を忘れ、アッパーを繰り出していた。不幸にもそれは波留さんのアゴを捉え、そのまま気絶させてしまう。しかも口から泡を吹き、白目を剥いて手足は痙攣している。  ――ヤバイ、このままでは天に召されかねない。  焦った私は急いで庭へ行き、そこに植えてある木から適当に葉っぱをもぎ取った。そしてそれをすり鉢で磨り潰して波留さんに与える。 「ぐぼぁ……っ!」  私の熱心な治療のかいもあって、波留さんは意識を取り戻した。  でも飲ませた葉っぱが激マズだったのか、胃の内容物を含めて全て吐き出してしまったのだった……。  
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