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男と別れてからも、ここから抜け出すことを少女は諦めきれずにいた。 ずっとここにいては何も変われない。そのためには自分自身が強くならなければならない。
かつてごみを漁って手に入れたおもちゃのようなショートボウを手に、少女はたった独りで修行を積む。土で作ったものは雨にも負けず、むしろ濡れたところが堅く強くなるほどに成長した。
地面に手をつき土から矢を作り出し、ショートボウに組んで構える。敵を定め、矢を放ってみる。
思いの外、相性がいいらしく、上達は早かった。
……いつかもう一度彼に会いに行く。
少女は、あの日出会った男の名を忘れぬよう自分のことを"あんどう"と名付け、彼に貰ったブルゾンを身につける。便りになるのは背中に書かれたマークと「安藤」という名だけ。
『かみのけ、じゃま、かな。』
最後にごみを漁って見つけたピンク色のリボンで髪を結って陰から出てみる。
思っていたより明るい外の世界に戸惑いながら一歩一歩足を進める。
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