1人が本棚に入れています
本棚に追加
銃声と悲鳴で溢れる町。
橋の下で膝を抱えながら川を眺める少女。
時折、赤く染まり、得体の知れない物体が通りすぎるのを目で追う。生臭いのはもう慣れた。
少女には名前がない。
というより、物心ついたときにはすでに独りで、家族の存在もわからず、自分の名を誰かに呼ばれたことがない。
誰が敵でどこに味方がいるかわからない少女にとって、ここが唯一の居場所なのだ。ただひとつだけわかることは、自分が土属性であるということ。土で人形や遊び道具を作り出しては独りで遊んでいたが、力が弱いせいか雨の日には壊れ、心に儚さだけが残ることに気づいてからはそれもしなくなった。
誰に気づかれることもなくただじいっと一日が過ぎるのを待っている。
最初のコメントを投稿しよう!