Kiss

4/18
前へ
/167ページ
次へ
伊織がそのプレハブ小屋に入ってしばらくすると、窓から伊織の姿が見えた。 伊織の肩には、ベルトのような物がぶらさがっていて。 「あ、あれは……」 それがギターだと気づいた時には、大きな音が辺りに響いていた。 無心にギターを演奏する伊織。 その姿に、一瞬にして俺は心を持って行かれてしまった。 伊織がギターをやっていることは、もちろん知っていた。 毎晩のように、隣の部屋から弦を弾くような音が聴こえるから。 だけど、まさかこんなに上手いなんて。 あれは、本当に伊織なのか……? 「あの一年の子、すごいね」 三年生なのだろうか。 たまたま近くを歩いていた男の先輩が数名、プレハブ小屋を見ながら足を止めた。 「新しく軽音部に入部した子だよな。あの子はすごい」 軽音部? 伊織、軽音部に入ったのか?
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

628人が本棚に入れています
本棚に追加