Kiss

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「絶対に伊織と一緒に音楽をやりたいって思った。 早くしないと、誰かに目を付けられる。 それは何としてでも阻止したかったから、速攻でバンドに誘ったんだ」 さっき先輩達が、コイツについて話していたよな。 三年の先輩が知ってるってことは、コイツは相当実力があるバンドのボーカリストなんだ。 そんなヤツが伊織を絶対に誘いたいって。 伊織は、そんなにも優れたギターリストなのか? 「初めは誘っても乗り気じゃなかったのに、合宿から帰った途端、急にOKしてくれたんだ。 何があったか知らないけど、俺には好都合だった」 乗り気じゃなかったのに、合宿後に急に気が変わった? 伊織の様子が最近おかしくなったのも、合宿の後からだ。 一体、伊織にどういう心境の変化があったんだろう。 「伊織、アイツは化けるよ。 これからもっとすごいギターリストになる。 俺でも手に負えなくなるかも? それを考えるとゾクゾクする」 そう言って目を輝かせるコイツを見ていたら、なんだか胸が妙にざわついた。 プレハブ小屋に目をやると、相変わらず伊織は無心でギターを弾いていて。 俺はそんな伊織をしばらくじっと見ていた。
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