628人が本棚に入れています
本棚に追加
「絶対に伊織と一緒に音楽をやりたいって思った。
早くしないと、誰かに目を付けられる。
それは何としてでも阻止したかったから、速攻でバンドに誘ったんだ」
さっき先輩達が、コイツについて話していたよな。
三年の先輩が知ってるってことは、コイツは相当実力があるバンドのボーカリストなんだ。
そんなヤツが伊織を絶対に誘いたいって。
伊織は、そんなにも優れたギターリストなのか?
「初めは誘っても乗り気じゃなかったのに、合宿から帰った途端、急にOKしてくれたんだ。
何があったか知らないけど、俺には好都合だった」
乗り気じゃなかったのに、合宿後に急に気が変わった?
伊織の様子が最近おかしくなったのも、合宿の後からだ。
一体、伊織にどういう心境の変化があったんだろう。
「伊織、アイツは化けるよ。
これからもっとすごいギターリストになる。
俺でも手に負えなくなるかも?
それを考えるとゾクゾクする」
そう言って目を輝かせるコイツを見ていたら、なんだか胸が妙にざわついた。
プレハブ小屋に目をやると、相変わらず伊織は無心でギターを弾いていて。
俺はそんな伊織をしばらくじっと見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!