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「伊織、窓開けて」
その日の夜、俺は久しぶりに自分の部屋の窓から伊織を呼んだ。
部屋に入ろうとしたけど、鍵がかかっていたから声をかけるしかなかった。
しばらく待っていると窓に人影が映って。
ガラガラと開けた窓の隙間から、伊織が顔を覗かせた。
「何?」
気だるそうに問いかける伊織。
「そっち行っていい?」
俺の言葉にしばらく黙り込んでいた伊織だったけど。
何も言わずに、うんと頷いた。
窓から窓へと飛び移って、伊織の部屋に足を踏み入れる。
久しぶりに入る伊織の部屋。
ラックには相変わらず大量のCD。
だけど、ギターやそれに伴う機材を見ていたら、まるで知らない人の部屋に来たみたいだ。
伊織の部屋に入るのは、多分中2以来。
この1年半の間に、伊織の部屋がこんなにも変化していたなんて。
「珍しいね。颯斗がオレの部屋に来るなんて」
ベッドに腰を下ろした伊織が言った。
「うん。ちょっと聞きたいことがあって」
そう言うと俺は、伊織の勉強机の椅子に静かに腰を下ろした。
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