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「伊織、最近俺と一緒に学校に行かないし、夕飯も先に食べてしまうだろう?
どうしたのかなって思って」
こんなこと初めてだから、母さんも俺も心配しているんだ。
「もしかして、俺のこと避けてんのかなって」
俺の言葉に、目を伏せる伊織。
「別に避けてねぇよ……」
こうして目を合わせない時の伊織は、大抵図星なんだけど。
嘘を……、ついてる?
「最近オレ、軽音部に入って。
朝練もあるし、夜もギターの練習がしたいから。
それでお前と時間が合わないだけだ」
軽音部、か。
俺は昼間に会った、あのリカルドのボーカルを思い出していた。
伊織のことを、やけに気に入っていたアイツ。
ああいう派手なタイプの男に、疑い深い伊織がどうして付いて行ったのか。
俺はそれが不思議で仕方がなかった。
「どうして急に、部活なんて始めたの?」
中学の頃だって、俺がどんなに勧めても絶対に部活なんてやらなかったのに。
一体、どういう心境の変化?
「どうしてって。
颯斗が言ったんじゃねぇか。
部活に入れって。
だから、入った。
何か文句ある?」
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