Kiss

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「文句なんてないよ。あるわけない」 そうじゃなくて。 俺が知りたいのは。 どうしてアイツの誘いに応じたのか……。 それが、やけに気になるんだ。 「颯斗の言う通りだった。 部活は楽しいし、話せるヤツも一気に増える。 始めて良かったって思ってるよ」 「伊織……」 「颯斗は、オレに部活をやって欲しかったんだろう? 中学の頃からずっとそう言ってたもんな。 でも、それってオレのためって言うより。 オレを突き放したかったからなんだな……」 「え……?」 何? 一体、何を言ってる? 「部活を始めてみて気づいた。 部活を始めたら、お前に会う暇なんかない。 だから必然的に、お前から離れていくことになる。 それで、ずっと勧めてたんだな。 金魚のフンみたいに、お前に付いて来るオレがいなくなるから」 「ちょっ、伊織?」 何言ってるの? ワケがわからないよ。 「さっき、避けてるのかって聞いたよな。 違うだろう? お前がオレを避けてんじゃん。 お前が……。 颯斗が先にオレを避け始めたんじゃんか……!」 涙目で訴える伊織。 俺はそんな伊織にただただ驚いて、すっかり固まっていた。
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