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「良かったな。
これでお前の望みが叶ったじゃねぇか。
嬉しいだろう?
オレみたいな厄介者がいなくなって」
「厄介者?
俺がいつそんなことを言った?」
俺は一度だって、お前を厄介者だなんて思ったことはない。
なんで部活を勧めただけで、俺がお前を厄介払いしてるって思うんだよ。
伊織の悪い癖だ。
いつだって極端な受け取り方をする。
「言わなくても、態度に出てんだよ……っ」
「出してない!」
俺がそう強く言うと、伊織はひどく悲しそうな瞳をして唇を震わせた。
「もういいよ……。
オレは部活に打ち込むから。
お前も勉強と部活を頑張ればいいじゃん。
もう二度と、お前の邪魔なんかしねぇよ」
厄介者だとか、邪魔だとか。
どうして勝手にそう思うんだよ……。
「聞きたいことって、それだけ?
だったらもう帰れよ。
オレはもう、話すことなんかない……」
伊織はそう言うと、ベッドに顔を伏せてしまった。
仕方なく俺は、言われるまま自分の部屋に戻った。
なんて声をかけていいか、わからなかったから。
だけど。
この時の俺の選択が間違っていたことを知るのに。
そう時間はかからなかった。
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