Kiss

11/18
前へ
/167ページ
次へ
「良かったな。 これでお前の望みが叶ったじゃねぇか。 嬉しいだろう? オレみたいな厄介者がいなくなって」 「厄介者? 俺がいつそんなことを言った?」 俺は一度だって、お前を厄介者だなんて思ったことはない。 なんで部活を勧めただけで、俺がお前を厄介払いしてるって思うんだよ。 伊織の悪い癖だ。 いつだって極端な受け取り方をする。 「言わなくても、態度に出てんだよ……っ」 「出してない!」 俺がそう強く言うと、伊織はひどく悲しそうな瞳をして唇を震わせた。 「もういいよ……。 オレは部活に打ち込むから。 お前も勉強と部活を頑張ればいいじゃん。 もう二度と、お前の邪魔なんかしねぇよ」 厄介者だとか、邪魔だとか。 どうして勝手にそう思うんだよ……。 「聞きたいことって、それだけ? だったらもう帰れよ。 オレはもう、話すことなんかない……」 伊織はそう言うと、ベッドに顔を伏せてしまった。 仕方なく俺は、言われるまま自分の部屋に戻った。 なんて声をかけていいか、わからなかったから。 だけど。 この時の俺の選択が間違っていたことを知るのに。 そう時間はかからなかった。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

628人が本棚に入れています
本棚に追加