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「すげぇ……。
それだよ、それ!
オレが聴きたかったのは。
やっと聴けた!」
嬉しそうに笑うアラタ。
コイツ、一体何者?
なんでそんな微妙な音の違いが聴き分けられるわけ?
「やっぱお前、好きな子がいるんだな」
「いや、いないって」
「えー、でも。
誰かのことを思って弾いたんだろう?」
「うん、確かにそうだけど。
オレが思い出していたのは男だ。
それも、オレ達と同じ高校生……」
オレの言葉に、アラタがギョッと目を見開いた。
そう。
あの日オレが思っていたのは、颯斗のことだ。
颯斗が石中とばっか仲良くするから、それが悲しくて。
憂さ晴らしに弾いたギターだった。
「じゃあお前、その男が好きなんだな」
「え……?」
「本気で恋してるだろう?」
「恋?
バッ! 相手は男だぞ?
んなもん、ありえるか!」
颯斗に恋って何だよ。
どういう発想?
バッカじゃねぇの?
「だってお前、そいつのことで頭がいっぱいなんじゃねぇの?
そいつといつも一緒にいたくて。
そいつを誰にも触れさせたくなくて。
そいつを自分が独占したい。
違うか……?」
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