Kiss

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“違う”って言いたいのに。 なぜか言葉にならなかった。 確かにオレは、颯斗のことばかり考えている。 昔みたいに、隣で寝ていて欲しい。 石中と仲良くなんかして欲しくない。 オレのことだけ考えていて欲しい。 そう思うけど。 「でも……、恋じゃねぇ……」 幼なじみだから。 兄弟みたいなモンだから。 オレ達の間に、誰も入って欲しくないだけ。 オレ以上に大切な存在が、現れて欲しくないだけだ。 「その相手は、伊織のことどう思ってんの?」 「え……?」 「同じように思ってくれてんの?」 アラタの言葉に、首を横に振った。 「思ってねーよ。 最近じゃ、オレ以外にすげー仲の良いヤツがいるし。 オレのことは拒否してる」 一晩だけ隣で寝させてくれって頼んでも。 ダメだって言われた。 「オレを、どんどん突き放していくんだ。 多分、オレみたいなのがそばにいたら、迷惑なんじゃねぇかな……」 もともと全然タイプが違うし。 父親同士が仲良しじゃなきゃ、オレ達は絶対友達にはなれてなかった。 いい加減、オレのことが嫌になったのかも。 この前だって。 帰れよって言ったら、あっさり帰ったもんな。 昔はオレが泣いたら、オレが笑うまでずっとそばにいてくれたのに……。
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