Kiss

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「ふぅん。つまり、お前の片思いってわけか」 「だから、恋じゃねぇって!」 「でも、お前の心を支配しているヤツがいるのは確かだろう? じゃなきゃ、あんなに切なくて泣けるギターを弾けるはずがないから」 颯斗が、オレの心を支配してる? 「まぁ……、それは否定しない」 拒否されて悲しくなるのも。 石中と一緒にいるのを見て苦しくなるのも。 相手が颯斗だから……。 「そっか。伊織には、そんな相手がいたのか……」 そう言って、少しずつオレの方に近づいて来るアラタ。 「思い出すと、泣きたくなるくらい。 そこまで思っている相手が……」 アラタが近づくたびに、無意識に足が後ろに下がって行く。 芸術品と呼べそうなほどの美貌のアラタは、近づき過ぎると怖い。 それほど迫力がある妖艶さだから。 「その相手が女の子なら、別に何とも思わなかったんだけど。 男だと思うと、ちょっとムカつくな」 「え……? な、何……?」 ムカつくってどういうこと? 気がつけばオレは壁を背にしていて、完全にアラタに追いつめられていた。 「なんか妬ける」 そう言って、オレに顔を近づけるアラタ。 身動きも取れずにアラタをじっと見ていたら、オレの唇に柔らかいものが触れた。
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