628人が本棚に入れています
本棚に追加
「ふぅん。つまり、お前の片思いってわけか」
「だから、恋じゃねぇって!」
「でも、お前の心を支配しているヤツがいるのは確かだろう?
じゃなきゃ、あんなに切なくて泣けるギターを弾けるはずがないから」
颯斗が、オレの心を支配してる?
「まぁ……、それは否定しない」
拒否されて悲しくなるのも。
石中と一緒にいるのを見て苦しくなるのも。
相手が颯斗だから……。
「そっか。伊織には、そんな相手がいたのか……」
そう言って、少しずつオレの方に近づいて来るアラタ。
「思い出すと、泣きたくなるくらい。
そこまで思っている相手が……」
アラタが近づくたびに、無意識に足が後ろに下がって行く。
芸術品と呼べそうなほどの美貌のアラタは、近づき過ぎると怖い。
それほど迫力がある妖艶さだから。
「その相手が女の子なら、別に何とも思わなかったんだけど。
男だと思うと、ちょっとムカつくな」
「え……? な、何……?」
ムカつくってどういうこと?
気がつけばオレは壁を背にしていて、完全にアラタに追いつめられていた。
「なんか妬ける」
そう言って、オレに顔を近づけるアラタ。
身動きも取れずにアラタをじっと見ていたら、オレの唇に柔らかいものが触れた。
最初のコメントを投稿しよう!