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それからはもう、ひたすら練習練習の毎日だった。
朝と放課後の練習はもちろんのこと、休みの日もメンバーで集まった。
アラタは音作りに殊の外厳しくて、特にオレに対しては容赦なかった。
そうやってアラタに絞られながら曲作りに励み、ライブがあと一週間後に迫った頃、アラタが不意にこんなことを言った。
「今日、伊織の家に泊まる」
「は?」
今、なんて言った?
オレの家に泊まるって言ったか?
「なんで?」
「なんでじゃないだろう? このままじゃライブに間に合わないよ。
ラストに演奏する曲、あれを仕上げないと」
「あー、あれか」
確かに今のままだと、ライブに間に合わない。
あの曲はコード進行が高度だし、アラタが思い描いている世界観とオレのギターがなかなかマッチしないんだ。
「つうわけで、もう行こうぜ。
そろそろプレハブ閉めないといけない時間だし」
「マジで来る気かよ……」
ボソッと呟けば、ベースのカイトに頑張れと肩とトントンと叩かれた。
どうやらカイトも、同じ経験があるらしい。
泊まりがけでやるってことは、きっと完成するまで眠らせてもらえないんだろう。
なんだか気が遠くなった。
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