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「伊織は?」
俺は椅子から立ち上がると、窓に近寄って尋ねた。
さっきから伊織の姿が見えないけど、どこにいるんだろう。
「伊織なら、風呂だよ」
「風呂?」
コイツが来ているのに、風呂に入っているってどういうこと?
「俺はさっき入ったんだ。
風呂上がりで暑いから窓を開けたんだけど。
そうしたら、あんたがそこにいてビックリした」
「え……?
なんで伊織の家で風呂に入ったの?」
「なんでって。
俺、今日ここに泊まるから」
「と、泊まる?
なんで?」
俺の言葉に、リカルドのボーカルが怪訝そうな顔をした。
「なーんか、さっきから質問ばっかだね。
近々ライブがあるからさ、急ピッチで曲を仕上げないといけないんだ。
部活の練習だけじゃ間に合わないから、それで泊まることにしたんだよ。
ところでさ。
伊織の家って、普段もこんなふうに誰もいないの?」
「う、うん……。
伊織は親父さんと二人暮らしなんだ。
その親父さんが、仕事で留守にしがちだから」
「マジでー?
それ、早く知りたかったなー。
知ってたら、もっと早くに泊まりに来たのに」
もっと早くにって……。
もしかしてコイツ、これからも伊織の家に泊まりに来るつもりなのか?
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