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「あの、気を悪くしないで聞いて欲しいんだけど」
「何ー?」
軽い口調で返事をして、窓の桟に頬杖をつくリカルドのボーカル。
俺は一度ふぅと息を吐くと、話を続けた。
「伊織の家に誰もいないからって、その家をバンドの溜まり場みたいにするのだけはやめて欲しい」
「溜まり場?」
「よく聞くだろう? 親が留守にしがちの家は溜まり場になりやすくて。
大騒ぎしたり、タバコや飲酒をしたりして、近所迷惑になったりするって話」
俺の言葉に、そいつは目を丸くさせた。
「あんた、真面目だねー。
別に溜まり場になんかしないよ。
メンバーは、ここには連れて来ないつもりだし。
俺がここに来るのは、伊織と音楽を作る時だけだから」
「それでも、頻繁にここに泊まりに来るのはやめて欲しい。
ウチの親、伊織の親父さんからくれぐれも伊織のことを頼むって言われてるんだ。
伊織を守る責任がウチの親にはあるし。
親父さんの留守中に頻繁に誰かが泊まりに来るって、あんまり良い状況だとは言えないから」
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