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ドアが開く。そうして入ってきたジュディス様は私を見て、エメラルドの瞳に沢山の涙を浮かべる。駆け寄ってきたジュディス様はそのまま私に覆い被さるように抱きついて、声を上げて泣き出してしまった。
どうするのが正しいのか。私はそっとその頭を撫でていた。震える肩を、抱きしめていた。
「ごめんなさい、ルーク」
「ジュディス様?」
「寒くして、ごめんなさい。私…」
私は笑みを浮かべ、首を横に振った。謝られる事など何もないのだから。
「ルーク、私の事嫌いになった?」
「まさか! どうして…」
「私が、ルークを傷つけてしまったから。背中、沢山痛かったでしょ? 沢山血も出て、私…」
泣きながらそう言ったジュディス様に、私は笑った。そして、首を振って全てを否定した。
なぜなら、痛くなどなかったのだから。この方を、嫌いになる事などないのだから。
「痛くなどありません。ジュディス様の事を、私はお慕いしていますよ」
「本当?」
「えぇ、本当です」
ようやく顔を上げた、涙でぐちゃぐちゃの頬を手で拭いながら、私は自然と笑っている。
その側で、グラース様もその様子を見て穏やかにしていた。
「ルーク」
「はい」
「お前を正式に、ジュディスの護衛につける。精進してくれ」
驚きながらも、ジュディス様が向けてくれる信頼の瞳に私は心を決める。
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