【出産】アンテロ誕生裏話

2/8
862人が本棚に入れています
本棚に追加
/192ページ
「馬鹿、食べられる内に少し食べておかないと体力持たない。それとランセル、お前は綺麗なシーツをできるだけ沢山と、ぬるま湯、軍で使うテント持ってこい」 「どうしてテント!」 「ベッドの上で産めねぇだろうが!」  血みどろにされたいのかアホが。  それでもハリスはやはり早い。あいつの従属属性はこういう時に実に役立つ。バタバタと動き出したかと思えば直ぐに果物とパンと水をたっぷり持ってきた。しかも小さな皿にチョコレートを数粒乗せてきた。良く出来た奴だ。 「あの、これでいいっすか?」 「上出来だ」  ふわっと笑い、ハリスの頭を撫でてやると照れたように赤くなり、また動き出す。そしてあれよあれよと、ランセルに言いつけたものまで揃えてきた。 「おい、役立たず」 「だって、放っておけないですし」 「放っておいていい! 病気じゃないんだぞ」  むしろ産まれてこない方が大問題だろうが。  そうする内に陣痛は進んで腰骨が軋むように痛み出したが、俺はそもそもが大きい。予想よりはずっと楽だ。 「ランセル」 「はい」 「産むのは俺一人でいい。お前は医者を連れてきて産まれた子供の診察が出来るようにしておけ」 「私も側にいますよ!」 「何も出来ない奴が側でウロチョロするのは目障りだ」  言えばもの凄く傷ついた顔をしたが、本当の事だ。コイツがいたってイライラするばかりで何の役にも立ちはしない。     
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!