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帰り道、エヴァが持たせてくれたお土産を手に俺はランセルと黒龍の王都を歩いていた。
「なんか…恥ずかしかったですね」
「お前のせいだ」
「すみません」
珍しく本気で落ち込んでいるコイツの隣で、俺は自然と繋いだ手を見ている。いつのまにか普通になったこの行為を、どこか微笑ましく。
「浮気なんてしないんだぞ、まったく」
「だって…」
「信用できないのか?」
「…信じてますけど、絶対なんてありませんし…それに、悔しくて…」
そんな馬鹿な事を言うコイツを、俺は穏やかに見ている。しょぼくれるのはいつもコイツだ。
「俺に浮気されたくなかったら、いつまでもいい男でいろ。嫉妬なんてしてる暇ないだろ」
「! はい!」
ハッとして俺を見上げ、生真面目に返事をする。そういうランセルだからこそ、俺は側にいるんだろう。いつまでも、こうして手を繋いで。
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