862人が本棚に入れています
本棚に追加
/192ページ
国境を接するゾルアーズ軍第三砦。
元は俺がいた砦で緑竜軍を待っていたのは、懐かしい面々と補佐官だったハルバードだった。ただやはり、表情が厳しい。
「久しぶりだな、ハルバード」
「グラース隊長…」
前に出て声をかければ、それだけで悲痛に瞳が歪むハルバードは、俺の背後に立つランセルを見て睨み付けた。
「よくも、ぬけぬけと…。貴方がこの方を攫っていったのですね!」
「えぇ、その通りですが」
「許さない!」
手を上げたそれで、控えていたゾルアーズの部下達が身構えたのを見て俺が肝を冷やした。
こんな所で元部下と現部下+1が睨み合いなどたまらない。
今にも戦いになりそうなその場で、俺はランセルの前に出た。
途端、ハルバードは苦しそうな顔をした。
「何故庇うのです!」
「一応夫だからな。殺される訳にはいかない」
「夫…?」
俺の発言に、信じられないという様子でハルバードは俺とランセルを見る。
酷く歪んだ辛い目に、俺の方が申し訳なくなった。
「貴方は、無理矢理攫われて…軍もそのせいで…」
最初のコメントを投稿しよう!