帰省(1)

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帰省(1)

 アンテロが産まれた1年後、俺は共同作戦の話し合いの為に懐かしい祖国に戻ることになった。  それというのも緑竜の王が俺の魂を引っこ抜くのに使ったアイテムが、やはり違法なものだと分かったのだ。  国内の闇商人を多く摘発したガロンは、このアイテムの出所を探った。そしてやはり、ゾルアーズ国の深い森の中に製造している奴がいることを突き止めたのだ。  多少、心配ではあった。それというのも前回の共同作戦の際に、ランセルが俺を攫っているからだ。  当然あれこれ面倒が起こるだろうと思い、監禁生活が解けた後直ぐに軍事総長宛に正式な軍の脱退届を出し、国に対しても出国手続きをした。それだけでは心配で、実家に手紙も一応は送っておいた。  ただ問題は、これらに対する返信が返ってきていないことだ。  単純に「勝手な息子は勘当だ!」という方針ならいい。むしろその通りで何の反論もできない。勝手をしたのは確かで、そこには確かに俺の意志があった。ランセルは大いに責められればいいとは思うが、あいつばかりのせいではない。  だが問題は、あれこれと動いていた場合だ。その場合、俺の帰省自体何かしらの罠かもしれない。とりあえず国に入れる、そういう事かもしれない。  だがその場合、俺がランセルを守る。その心づもりだった。
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