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もう一度、録画をやり直す。
「おっす、おら、渡辺」
ちがう! 悟空のモノマネをしたいわけじゃない。
「こんばんは、渡辺真一です。いやあ、すっかり秋めいてまいりましたね」
ちがう! アナウンサーみたいに天気の話題なんていらない。
「ハロー、マイネームイズシンイチワタナーベ」
ちがう! 英会話もいらない。
でも試行錯誤しているうちに何だか楽しくなってきて、何パターンもの告白動画を録画していく。
「ウッホ、ウッホ、ウッホ、ウッホ、ウホホ! ウッホ、ウッホ、ウッホ、ウッホ、ウホホ! 渡辺ゴリラっす。バナナが好きっす。でもバナナより葉山さんが好きっす。葉山さん大好きだー! 俺のバナナを食べてー、なんちゃって! ウッホ、ウッホ、ウッホ、ウッホ、ウホホ! ウッホ、ウッホ、ウッホ、ウッホ、ウホホ! 渡辺ゴリラ、ゴリラの渡辺、ウッホ、ウッホ、ウッホ、ウッホ、ウホホ!」
僕がゴリラになりきって、肩を上下させながら自分の部屋を練り歩いていると、いつの間にか帰宅していた妹の美紗が部屋を覗いていた。
「お兄ちゃん、なにやってんの……」
美紗はにやにやと笑っている。
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