音のない世界

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　合唱コンクール当日。

　普段は制服を気崩している男子も、今日はきちんとネクタイをしめている。

　その姿が可愛くて、ひとりクスッと笑った。

　私の居場所は、いつものようにパイプ椅子。

　でも、今年はいつもとは違う。

　曲が始まり、私は指揮者の指揮棒に合わせて足でリズムをとる。

　みんなは口で、私は手で、歌を唄う。

　何人かが、私をちらちらと見ながら小さく手話をしてくれた。

　何度も見たおかげで、頭の中に曲が流れる。

　もしかしたら、それは実際とは全然違うのかもしれない。

　口に出したら、すごく音痴なんだろうな。

　みんなに笑われちゃうかな。

　でも、今年の合唱コンクールは今までで1番楽しい。

　みんながあの動画で、初めて私に歌を聞かせてくれたから。