29(承前)

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 そういうとタツオは斜面の安全な窪地から立ちあがり走りだした。ほんの30メートルほどの距離が絶望的に遠く見える。だが、黒土を踏む軍靴は止まらなかった。「止水」をつかいたいところだが、まだこの先の持久戦は長かった。ススキの群生に到着すると、思い切りダイブする。テルがにやりと笑っていった。 「遅かったな。お散歩でもしてるのかと、思ったぞ」  タツオは相手にせずに後方を振り返り叫んだ。 「こい、王将」
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