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 サイドテーブルへマグを戻し、布団の中にもぞもぞと体を収め克己さんの方へ体を向ける。 「何の本読んでるの?」 「小説、奇譚。だよ」 「きたん。どんなお話?」 「奇譚とは、珍しい伝承や、不思議なお話のことだよ。その土地に昔から伝わる怖い言い伝えや、その元になった事実を短編にして集めてあるんだ。わりと面白いよ。みんなはこれを作り物だと思って読んでいるのだと考えると余計にね」  僕もちょっと前まではフィクションだって思ってた。 「うん。そうだね」  ニコッと笑って答える。  吸血鬼と狼人間が仲良しのお話も奇譚にいれてもらわないといけないね?  克己さんは片手で本を持つと、もう片方の手で僕の頭を撫でた。その気持ちよさに目を閉じる。  本当はずっとこうしていたい。 「どこにも行かないから、安心していいよ」 「うん。手、繋いでいい?」 「いいよ」  頭を撫でていた克己さんの手が止まり、頬の上にポフッと乗った。  その手を上から握る。  へんな恰好。でも、これはこれで落ち着く。  携帯はもう鳴らなかった。  僕は克己さんのヒンヤリした体温を感じたまま、安心して眠りについた。
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