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 家に着いたのは六時頃だった。門の前で鼻が疼く。  まさか……。  外門を解除し、焦る気持ちで鍵を出し玄関を開ける。男物の革靴が揃えて置いてあった。  ドクンドクンと徐々に鼓動が大きくなっていく。  まさかもなにもない。来てる。出入り禁止って言ったのにっ!   腹の底から込み上げる熱に拳をグッと握った。寝室にいるのはわかってる。寝室へ突撃しかけて、自分の手を握りグッと耐えた。  あの場面を想像するだけで僕の体内はゴウゴウと熱を放つ。首から下げた御守りを握りしめ歯を食いしばりながら、大股で足早にリビングへ向かう。  アピールするように勢いよくドアを開けると、克己さんの寝室のドアが開いた。中から出てきたのは雅也さんだ。スキのない黒のスーツ姿が威圧感を感じさせる。  僕は黙ったまま雅也さんを睨んだ。 「そんな怖い顔をするなよ。もう帰るから」  雅也さんは片方の唇だけ器用に上げて、一歩前に出た。僕は引いてなんかなるもんかと腹に力を入れる。 「克己は今、血を補給したところだ。しばらくしたら回復するだろうから、おとなしく待ってろ」  その言葉にピンと張りつめていた緊張が切れる。 「え……回復って」  雅也さんの腕を掴み、縋るように詰め寄った。そんな僕を雅也さんは見下ろし、淡々とした口調で言った。 「俺たちの食事は毎日じゃなくてもいい。だが四日空けるのはキツイ。お前は肉がメインらしいから理解できないかもしれないが」  キツイ……お腹が空くとかそういうレベルの話じゃなかったってこと? 「克己は、以前は三日おきに食事をしていた。でもお前が来てからは、お前をひとりにしたくないと言って、四日空けるようになった。昨夜は五日目の夜だったんだ。意味はわかるよな?」  僕は呆然と頷いた。  すごく無理をさせてたんだ。分かってたつもりで、全然分かってなかった。
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