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「心配かけてごめん。真が落ち込むと、私も悲しい。これからは心配掛けないようにするから」
「違う。僕は、……雅也さんの所に行って欲しくなくて……だから」
真っ直ぐに僕を照らし包み込んでくれる克己さんの眼差しから逃れるしかできなくて、顔を固定されたまま視線を外した。
「そんなことは、わかってるよ」
克己さんはクスッと笑った。
「へ?」
思わず、視線が戻る。
「追いかけてくる真はとても可愛かった。だから食事を摂ることなど、どうでもいいと思えてしまってね。雅也から叱られたよ。真を守りたいなら、食事を抜くな。とね」
克己さんが恥ずかしそうな表情で話している。変な話だけど、その姿はとてもかわいく見えた。克己さんの首に両手を掛け克己さんを見上げ素直に白状した。
「もう行かないでなんて言わない。食事は絶対に必要だし。でも、……僕じゃダメ?」
克己さんが目を丸くした。
「真の血はもらえないよ?」
「そっか……ってそっちじゃなくて」
い、言い辛い。すごく言い辛い。気づいてよ! って願いを込めて克己さんを見た。なのに、克己さんは首を傾げ、キョトンとした顔で僕を見返す。
「そっちじゃなくて?」
分かんないんだ。僕は意を決しグッと目を瞑って、克己さんの口に唇を押し付けた。
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