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「まっ」  克己さんがビックリした様子で声を上げた。唇を離し、目を開くと、克己さんが目をパチクリしてる。 「やっぱり僕なんかじゃダメ? ガキっぽくて相手にならない?」  必死に訴えると、克己さんは狼狽えるように自分の口を手で塞いだ。 「真……そんなのどこで覚えたんだい?」 「え、……どこって、僕もう二十歳なんですけど……」 「そうか……じゃあ、誰かとしてきたわけだ……」  克己さんは妙に落ち込んだ声でボソッと言った。  なんでそんなに落ち込む? それに、「してきた」って……克己さんだって雅也さんとしてるのに、だから僕だって……。  それに、どうして自分だけ責められているのかもよくわからない。 「まだまだ子供だと思っていたのに……そうか……」 「そりゃ、克己さんは僕よりずっと年上だけど。僕だって、もう成人してるし……一応」  克己さんは口をへの字にして僕を見た。泣きそうな顔。 「な! なんで泣くんですか!」 「真……」  克己さんはぐったりした様子で僕をギュッと抱きしめた。 「まだ真は学生だろ? そんな慌てて大人にならなくていいんだよ。どうせすぐに、嫌でも大人になるんだ」 「いや、だから、成人」  克己さんは僕の言葉なんてまったく耳に入ってないように切々と話した。克己さんの中で僕はまるで子供なんだ。中学生とか、いや小学生だと思ってるのかもしれない。つまり僕なんて相手にできないよ。ってことなんだ。 「わかった。もういいです」  ググッと溢れそうになる感情を押し込めようとするのにどんどん視界がぼやけてくる。眉間に力を入れこれ以上無様な姿をさらさないように努めた。 「真」  克己さんは包んでいた僕の身体をグイッと持ち上げた。軽々と浮く身体。 同じ高さになって、真正面から見つめられる。  すごく嬉しかった抱っこ。この抱っこ大好きだったのに……今は。  胸が苦しくて、辛くって、僕は口を一文字に結び息を吸った。  絶対、泣かない。  頑張って、頑張って言えるだけの言葉を吐いた。 「放して。部屋に行く」 「真……」  克己さんはションボリした表情で僕をおろした。そんな顔されても、フラれたのは僕の方なんだ。 「おやすみなさい」
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