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 二階へ行こうとリビングを出る。克己さんはなにも言わなかった。それがまた、本当に自分は克己さんの恋愛対象にはなれないんだと言われてるようで悲しかった。  そのまま階段を上り自分の部屋に閉じこもった。晩御飯は唯一おいしいステーキを食べれる時間だったけど、それもどうでもいいと思った。電気も点けずにベッドに直行し、布団の中に潜った。  こんなはずじゃなかった。  今さっき反省したばかりなのに。克己さんを困らせたくないって、我儘で振り回しちゃいけないんだってそう後悔したばかりだ。なのに僕は……でも。  布団の中で小さくなって自分の体をギュウッと抱きしめた。 ――克己さんが好きだ。  でも、克己さんは……男性だから、女性じゃないから。それなら仕方ないとも思えるけど、克己さんにとって同性は対象外の理由じゃない。なのに、僕は同じステージにも立たせてもらえない。全否定だ。背筋がブルブルと震える。全身に力が入り硬化していく。 「やれやれ、とんだくそガキだな」  突然、耳元で雅也さんの声がして、一気にこもっていた力が消え、我に返った。  なんで? ここにいる?   そっと布団から少し頭を出すと、本当に雅也さんがベッドの横に立っていた。 「帰ったんじゃ……」 「様子を見てたんだよ。弟ってのはそんなに大事なもんなのか? 死にかかった次は、ストライキ? 克己を落ち込ませて楽しいのか?」  わかってるよ、そんなこと。僕だって。  それもこれも全部ひっくるめて落ち込んでるんだ。それなのにわざわざ追い打ちをかけてくるなんて、やっぱりコイツ嫌いだ!
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