第1章 マイホームできました

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今夜はなぜかその絵を引っ張り出してきて、晴馬はその前に胡坐をかいて座った。 「この絵・・・どうしようかな」 「・・・え?どうするって?」 「こんなに沢山人が来るなんて、想定外だった。 夏鈴の裸・・・誰にも見せたくないからさ・・・。丸めて大事に仕舞っても、いつか誰かの手に渡ったらって思うと気が気じゃないんだよ」 「せっかく描いてくれたのに・・・」 「俺さ、描いた時点でもう満足したから。焼いてしまおうかと思うんだけど・・・いい?」 「私は別にかまわないよ」 「よし・・・じゃ、焼くわ」 そうと決めたら早い晴馬は、キャンバスの木枠のホチキスを工具で外して絵を丸めた。そして、庭の小さなドラム缶の中で燃やし始めた。燃え尽きるまで2人でそれを眺めていた。 秋の色に染まる野山の風景を感じながら、いよいよ新婚旅行が近付いてきていた。 その前にクリスマスがあるけど、晴馬と結婚して以来、毎年えっちゃん夫婦が鳥の丸焼きをダッチオーブンで焼いてくれて、お母さんとお爺ちゃんと一緒に食べては飲んで楽しんでいた。今年からうちで宴会しようって話になったけど、出発が25日の夕方の便だからと、パーティーは23日の祝日にしてもらうことに決めた。 寒くなる季節、大きなベッドだけど一人一枚羽毛布団がある方が良いと言い出した晴馬が、勝手に一枚5万円の掛け布団を仕事帰り買ってきた。布団カバーも色違いですごく良いんだけど、家を建ててから彼の金銭感覚がちょっと危うくなっている気がする。
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