1732人が本棚に入れています
本棚に追加
/557ページ
おにぎりのアルミホイルを剥き、おかかのおにぎりを食べます。
「これ、ご飯も凄い美味しいですね。おかかもコンビニなんかのと全然違って美味しい。もうひとつは何なんだろう。楽しみだなぁ」
彼は子供のような笑顔で言いました。
私は、隣で彼のコンビニ弁当を食べます。
おかずの殆どは手を付けず、頑張って働く彼に残しておくことにしました。
「あ、僕、木ノ下 拓海って言います。すみません、ご飯まで頂いたのに名乗り遅れてっ」
鮭のおにぎりを一口食べたところで、胸元の小さな名札を見せながら、慌てた様子で言いました。
「私は、桜井ハルよ。ここから村に行く道の途中で食堂をやってるの」
静かな駅には、私達の声以外にも、すぐ傍の山から鳥の可愛らしいさえずりが聞こえてきます。
「へぇ!食堂ですか!こんな美味しいご飯が食べられるなら、行ってみようかなっ」
「是非。いつでもいらしてください。お野菜は、私や村の方々が作ったものでお料理をしているんですよ」
「良いですね!必ず行きます!」
そう言って木ノ下さんは、再びおにぎりを食べ始めました。
まだシトシトと小雨の降る、単線の線路を眺めながら、ゆっくりと時間の流れる小さな駅で、私は若い駅員さんと一緒に過ごしました。
街でのお話は次回に致しましょう。
私のお気に入りのお店のお話です。
最初のコメントを投稿しよう!