古き友・古民家カフェ

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ピッピッ ピッピッ 信号が赤から青に変わったことを知らせる音が鳴り、私は人々が行き交う間を歩いていきます。 観光地のこの街は本当に人が多いのです。 傘を差していると、隣をすれ違う人に当たらないようにするだけで一苦労。 普段生活している場所からは、考えられないほどの人の数です。 楽しげに騒ぐ若い人たち。 キョロキョロと辺りを見ながら歩く外国人。 彼らは、観光客でしょう。 スマートフォンを見たり、かざして写真を撮っている様な人。 今はやりのSNSとやらに載せるのでしょうか? ・・・私がこんな言葉を知っているのも、葉子さんに教えて頂いたからですけれどね。 誰かと電話しながら、難しい顔をするスーツ姿の男性。 無表情でただただ前を見て歩く女性。 下を向いてばかりの若い男性。 何だか、心に余裕がないのが滲み出ているように感じるのは私の勝手な偏見でしょうか。 雨の匂いが心地良いとか 風が昨日よりも柔らかいとか 聞こえてくる虫の鳴き声が、今までと変わったとか 小さな草花を見て、芽吹いた木々の蕾を見て、命を感じる。 そう言う事を、少し立ち止まって感じてみたら、きっと見えてくる世界も変わるように思うのです。 少しそこの山を越えた世界には、そういったことが溢れています。 慌ただしい日々、毎日頑張っている人達。 ほんの少しでも安らげる場所が見付かると良いのに。 そんな事を考えながら歩いていました。 目的のお店は、あともう少し。 2つ先の信号を左に曲がり、住宅街を進んだ場所にあります。
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