1732人が本棚に入れています
本棚に追加
/557ページ
「ハルさん、佐野さんからお手紙が来てますよ!北原さんとの文通、上手く言ってるみたいですー」
煮物で使った大根の皮を切っていると、葉子さんが外から戻ってきました。
「あら、それは良かったですねぇ。北原さんも、何事もなく退院できると良いですね」
「本当ですね。あと、また近い内に採れたてのお野菜も持ってきてくださるみたいです!」
葉子さんはそう言うと、手紙を封筒に戻してから、キッチンの側にある棚に置きました。
「それは楽しみですね。佐野さんのお野菜もとっても美味しいですから」
大根に続き、にんじんも細く切りました。
「今日は何作るんですか?」
葉子さんは、いつもそうやって嬉しそうに私が料理する手元を覗きにきます。
「大根の煮物と、大根の皮を使ったきんぴらです。大根の皮は厚く剥いてあるので、歯応えもあって美味しいんですよ」
「はぁー!すっかり冬メニューですねぇ。大根美味しそう・・・」
冷ましていた大根の鍋を見て、葉子さんが言いました。
「味見と言うことで、食べますか?」
私の言葉を待ってましたと言わんばかりに、足早にお皿を取りに行きました。
「ふふふっ。葉子さんはいつも美味しそうに食べてくれるから、私も嬉しいですよ」
柔らかい大根にお箸を入れた葉子さんに言いました。
「だって美味しいんですもん!いただきまーす!」
そう言って、大根を口に入れた時でした。
「こんにちは、ハルさん」
店の扉が開いて、入ってきたのは木ノ下 拓海さん。
以前、街へ行くときに利用した駅の、若い駅員さんです。
最初のコメントを投稿しよう!