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「このきんぴら、おいしーい!」
静かになった店内に、葉子さんの大きな声が響き、ぽんすけも驚いています。
「木ノ下さん、ご両親に会いに行く決心がついて良かったですねー。私も母が死んでから、もっと会いに行けばよかったなぁって後悔しましたから」
そう言って、ポリポリと歯応えの良いきんぴらを召し上がっています。
「そうですね。それに栗原さんが仰った、子供が居る賑やかな家が懐かしくなるというのも、とても共感しました」
「あー。私の母もそうだったのかなぁ」
そう言ってきんぴらを食べる葉子さんを、私はぽんすけの相手をしながら見ています。
「・・・ハルさんは長生きしてくださいね!」
「ふふっ。頑張ります。ぽんすけを置いて先にはいけないわよねぇ」
しゃがみこむ私の足元に、丸くなっているぽんすけの背中を撫でながら言いました。
「そうそう!そうですよ。ぽんすけも私も悲しみます!それに食堂が無くなったらお客さんも悲しいんですからねっ」
「そう言っていただけると嬉しいですね。では寒いですけど、明日も美味しいお料理が出来るように、畑のお世話をしに行きましょうか」
そう言って私は立ち上がり、奥の部屋に入ってコートを取りに行きました。
食堂の方から「ひぇー!せっかく暖まったのに!」と、葉子さんの悲鳴が聞こえ、思わず1人で笑ってしまいました。
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