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時刻は、午後2時半。
階段を降りてくる足音がしたかと思うと、葉子さんが顔を出しました。
「ハルさん、これ。寝ちゃってて・・・遅くなってすみません」
空っぽの土鍋と湯飲みを乗せたお盆を差し出してきました。
「あら。そのままで良かったんですよ。わざわざごめんなさいね、ありがとうございます」
「あれ、お客さんは?」
葉子さんは、ぽんすけも居ない店内を見回します。
「お外で遊んでもらっているんですよ。もう30分も経ちますね。ふふっ。余程楽しいんでしょうね」
私は笑いながら、りんごを取り出しました。
りんごの上部分を切ります。
「何してるんですか?」
葉子さんは不思議そうに見ています。
「お客様のおやつに、焼きりんごを作ろうと思いまして。後で葉子さんにもお持ちしますよ」
すると葉子さんの表情が、パッと明るくなりました。
「焼きりんご!楽しみにしておきます!やったー!」
葉子さんはまだ少し鼻声ながらも、上機嫌で部屋に戻っていきました。
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