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「あの・・・あけましておめでとうございます」
「あらっ。いらっしゃいませ。あけましておめでとうございます。ぽんすけ、良かったわねぇ」
やって来たのは、ぽんすけの前の飼い主さん。
小田 圭織さんです。
ぽんすけは彼女が入ってくるなり駆け寄り、足元をくるくると走り回っています。
「お正月休みなので、遊びに来ちゃいました」
「ありがとう。さ、お席へどうぞ」
私が小田さんを席へとご案内し、葉子さんはキッチンでお茶を淹れてくださいます。
「あ、おせちですか?私、独り暮らしなのでお節料理なんて食べてなくて。ここで食べられるなんて嬉しいです」
「お雑煮もありますから。ご用意しますね」
そう言うと小田さんは「嬉しい!」とわくわくしています。
「おにぎり、具は何にしましょうか?」
「じゃあ・・・昆布でお願いします」
「かしこまりました」
そうしてキッチンに入り、小田さんのお料理を準備しました。
葉子さんがお茶をお運びしている時、ふと店先にいるぽんすけを見ると、遊んでほしそうに小田さんをじっと見つめています。
「ふふっ。ぽんすけったら、小田さんが来てくれて本当に嬉しいのね」
澄んだ瞳で見つめるぽんすけに、思わず笑みがこぼれます。
「あとでお散歩に連れていってもいいですか?」
「勿論ですよ。ぽんすけも喜びますよ」
そんな私と小田さんの様子を、タツ子さんはお雑煮を食べながら見ていました。
「お正月って感じがするねぇ」
お雑煮のおつゆを飲みながら、タツ子さんが笑顔で言いました。
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