おせち料理

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午後1時。 食後のお茶を飲み、一息ついた小田さんが席をたちました。 「ぽんすけのお散歩に行ってきます」 彼女はそう言うと、大喜びするぽんすけを連れて食堂を出ました。 小田さんが店を出て、タツ子さんとお喋りをしていると間もなくして、村から杖をついて白井さんがやって来ました。 「どうも、あけましておめでとうございます」 「まぁ、いらっしゃいませ。あけましておめでとうございます。中へどうぞ。葉子さん、お願いします」 キッチンで片付けをしていた葉子さんも、慌てて「はーい!」と、お茶の用意をし始めます。 「冬になるとさすがに膝が痛くて。杖が無いと歩けないなんてすっかりじいさんですな。歳を感じます、はははっ」 そう困ったように笑いながら、席へ腰掛けました。 白井さんは82歳。 普段は山へ山菜を取りに行ったり、畑の世話をしたりと十分元気な方です。 「白井さん、お食事はまだですか?おせちとお雑煮をお出しできますが、いかが致しましょうか」 「あぁ、そしたらお願いできますか。すみませんね、片付けも済んでいたのに」 白井さんが申し訳なさそうにそう言いました。 「大丈夫ですよ。それに一生懸命作りましたから、食べていただけると嬉しいです」 私がそう言うと白井さんは安心したように「そうか、そうか」と仰いました。
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