看板犬・ぽんすけ

3/7
前へ
/557ページ
次へ
うちの店は酷い雨の日以外は、玄関や窓は開けっぱなし。 開店したのは梅雨の真っ盛り。6月の半ばでした。 その日も、3日連続で雨が降っており、お客さんも来ません。 これからやっていく為に取り揃えた、お気に入りの食器を洗って拭いていた時です。 しとしと雨だったので玄関は開けていたのですが、ふと見ると、そこに茶色い塊がこちらに背を向けて寝ていました。 「こんにちは、わんちゃん」 「・・・」 「あら。無視するなんて失礼じゃないかしら?」 その言葉が解るのか、頭をゆっくりと持ち上げ、こちらを振り向きました。 あまり綺麗とは言えない毛並みのその犬は、何処かから逃げてきたのでしょうか? 「あなたの飼い主さん、心配してるんじゃない?」 「・・・」 「なにか食べる?」 「・・・」 よし、と立ち上がり、エプロンを外して傘を手に取り外へ出ました。
/557ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1735人が本棚に入れています
本棚に追加