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地球は狙われている。
今、数多の星から地球を狙う魔の手が。
そう。今も、まさに。
何も知らずに平和に暮らす人々をも巻き込まんと、この混み合う通勤ラッシュの地下鉄ホームにさえ、宇宙人の侵略の魔の手がひそかに伸ばされようとしているのだ。
多香子は注意深く周りを見回した。
いる。確かに。
彼女の六感がそう言っていた。
多香子は仁王立ちとなり行き交う人々を素早く目で追った。ラッシュの人波が多香子の左右に分かれてゆく。
朝のこの時間の事でサラリーマンやOLと見られる客が多く、その中にまばらに、ラフな服装の老人や子供連れの若い母親などがいた。
「まもなく4番線に和光市行き電車がまいります」
アナウンスが流れて程なく、片側のホームに電車がすべり込んできた。ドアが開き電車から客があふれ出して、ただでさえ混雑しているホームが更に人で埋まる。
降りる客が出切ってしまうと並んでいた客が我先にと車内になだれ込んだ。紙切れ一枚
も入り込む隙のないような寿司詰め状態。半分乗り口の外にはみ出ている乗客を、ようやくに閉まるドアが押し込み、電車は駅を出てゆく。
改札からは客が際限なくホームに送り込まれ、新たな客たちは次の電車を待って両のホームに列をなす。
そんな慌ただしく行き来する人の流れが突然スローモーションとなり残像となり、喧騒は消えてホームに静寂が満ちた。
左右のホームに別れてゆく人の波の中央、多香子の正面に一人の男が立っていた。30代なかばだろうか。男は眼光鋭く多香子のいる方を睨みすえていた。
多香子の目が光った。
いや、心理的に、ではなく、一般の人たちには感知出来ないほどほんの一瞬、ぴかりと光ったのだ。
多香子の名を借りて人間の姿をしている者の本体には空気中に漂う、普通の人間の目にはとらえられない微細な物質や生物を見る能力があった。その能力を駆使して、空気中に紛れている怪しい気配の主を探そうとしていたのだ。
多香子の目から見えない光線が放たれ、男の顔の周辺を照らすと、ぼんやりとした影が浮かび上がった。
周りの一般の人間たちには見えない、多香子だけに捉えられる存在。
(ルーク星人)
頭の大きさに比較して小さい、足のない胴体。そこから生えた何本もの触手がくにゃくにゃと宙を泳ぐようにうごめいていた。
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