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コイツの中で勝手に話が決められていく。
冷淡に、抑揚のない声で突き放される。
今起きた事を忘れてしまえば、オレ達はこの車を降りた瞬間から他人になる。
運命の番なんて都市伝説だよ、と笑って冷やかせる。
確かに今ここにお互いの明確な恋心というものはない。あるのはフェロモンの匂いだけだ。
「でもだったらなんでこんなに……」
傷跡に巻かれたハンカチを見た。微かに血が滲んでズキズキと痛む。
こんな傷を負ってまで無理矢理犯す事を我慢した。それはコイツがあまりに怯えるから。
そして、その怯えるコイツを守りたいと……優しく扱いたいと思ったから。
それが運命の為せる力なのか?
何方かと言えば、その運命とやらはオレに無理矢理犯して契れと言っていた。
「なんでこんなにお前に惹かれるんだ……?」
オレは何を言ってるんだ。
それが運命の番ってやつなんだから仕方ないだろ。惹かれ合う様に出来てるんだ。
「お前もそうじゃないのか……?」
頭ではわかってる。
分かってるから苦しい。
番えないなら最初から出逢いたくなかった。傍にいるだけで全身の血液が沸騰するような、こんな感覚知りたくなかった。
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