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「……貴方はいい人だから、きっとオレみたいなΩじゃなくてもっと素敵な人と出逢える」
「いい人じゃない……犯そうとしたんだぞ」
「でもしなかった。こんな怪我までして抑えてくれた。無理矢理やろうと思えばオレは抵抗出来ないのに」
ハンカチを巻かれた手にソイツが手を重ねてきた。生地越しで体温が伝わらなくてじれったかった。
「オレに貴方は勿体ない」
離そうとする手を思わず握った。ズキンと痛みが走ったけれど、離す気はなかった。
「勿体ないとか、お前が勝手に決めるな」
「オレは自分の事は自分で決める」
「そうじゃない!」
手を離そうとするから更に強く握るとハンカチの隙間から血がポタリと落ちた。
オレの服に赤黒く染みて滲んでいく。
「これは、オレとお前の……二人で考える問題だろ!?」
真剣に言ったのにソイツは呆気に取られた顔をして、少し間を置いてからプッと笑い出した。
「ねぇ、まだフェロモンにあてられてる? オレ、Ωだよ? 今までどれだけ性処理に使われてきたかわかる?」
誰彼構わず誘惑するΩのフェロモン。
それがどんなに強烈か、オレだってさっき身を以て体験した。
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